企業が人を採用するとき、かかるのは時間だけではありません。お金(コスト)もかかります。
求人広告の掲載費、エージェントへの手数料、面接対応のための人件費、場合によっては説明会の開催費用まで――。気づけばかなりの金額になっていた、という企業は少なくありません。
最近では人件費や広告費の高騰もあり、採用活動にかかる「人的コスト」はますます増加傾向にあります。とくに中小企業では「できるだけコストを抑えて、良い人材を採用したい」という声が増えています。
この記事では、そんな中小企業が取り組める採用コストの最適化について、できるだけわかりやすくまとめました。これから採用活動を見直したい企業さまの参考になれば幸いです
採用コストとは?まずは中身を知ろう
「採用コスト」とは、人を採用するために企業がかけているお金の総称です。目に見える費用だけでなく、業務にかかる時間や労力も含めて、トータルで考える必要があります。
■採用コストの内訳(一例)
| 項目 | 内容 |
| 求人広告費 | 求人サイトや紙媒体などへの掲載料金 |
| 人材紹介手数料 | エージェントや紹介会社に支払う成功報酬 |
| 面接や説明会の会場費・交通費 | 自社開催・合同企業説明会など |
| 採用担当者の人件費 | 応募者対応・日程調整・面接・書類選考など |
| 採用ツール利用料 | 採用管理システム(ATS)・スカウトツールなど |
| 内定者フォロー費 | 内定者懇親会、フォローイベントなど |
■隠れたコストも見逃せません
たとえば、「応募者とのやりとりに1人あたり1時間かかっている」としましょう。
その1時間が1人だけで済むのか、10人なら10時間。そこに関わる社員の時給や業務時間を考えると、それも立派な「コスト」です。
なぜ今、「採用コストの最適化」が必要なのか?
ここ数年で採用を取り巻く環境は大きく変わっています。特に以下のような背景があり、中小企業にとって採用のあり方を見直す時期にきています。
1. 採用市場が厳しくなっている
・少子高齢化の影響で労働人口が減少
・求人倍率が高くなり、採用の競争が激化
2. 広告費や人件費が上昇している
・求人媒体の掲載費が年々上昇
・採用担当者の業務負担が増え、社内リソースも圧迫
3. 採用後の定着が課題に
・ミスマッチによる早期離職が増加
・再採用コストが何度も発生してしまう
これらの理由から、ただ「コストをかける」のではなく、ムダを減らして成果につながる投資を行うことが重要になっています。
採用コスト最適化の第一歩:「現状把握」から始めよう
いきなり手法を変えるのではなく、まずは自社の採用活動にどれくらいのコストがかかっているかを見える化してみましょう。
■現状把握のステップ
ステップ1:直近の採用活動を振り返る
・過去1年間で何人採用したか
・どの方法で採用したか(求人広告・紹介・ハローワークなど)
・媒体ごとの費用と応募者数・採用数
ステップ2:1人あたりの採用単価を算出する
以下のように計算してみましょう。
採用活動にかかった総費用 ÷ 採用人数 = 採用単価
この数字を出すだけでも、どの手法が効果的だったか、どこにムダがあったかが見えてきます。
中小企業が実践できる!採用コスト最適化の方法5選
ここからは、中小企業でもすぐに取り組める具体的な方法を紹介します。コストを抑えつつ、効果的な採用につなげる工夫を見ていきましょう。
1. 求人媒体を見直す
「有名だから」「毎回使っているから」という理由で求人媒体を選んでいませんか?
媒体によって得意な業種や年齢層、地域が異なります。自社に合った媒体選びがコスト削減のカギです。
■取り組みポイント
・応募者の属性と媒体の特徴を比較
・成果報酬型(採用時のみ料金発生)の媒体を検討
・無料で使えるツール(例:Airワーク、ジモティー)も活用
2. スカウト型採用の導入
近年注目されているのが、企業側から求職者にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」です。
■特徴とメリット
・求人掲載型よりミスマッチが少ない
・採用までのスピードが速くなる
・自社にマッチする人材だけにアプローチできる
▽ツール例
・Wantedly(若手向け)
・dodaダイレクト(中途採用向け)
・OfferBox(新卒向け)
コストはかかるものの、「応募→選考→内定」の流れがスムーズになり、結果としてコスト削減につながるケースもあります。
3. 採用代行(RPO)を活用する
限られた人員で採用活動をまわしている企業におすすめなのが、採用業務の一部を外部に委託する「採用代行(RPO)」です。
▽委託できる業務
・応募者へのメール対応・電話連絡
・スカウトメールの送信
・面接日程の調整
・応募者の進捗管理
◎メリット
・担当者の負担軽減
・応募者対応のスピードアップ
・採用活動の質の向上
月額固定や成果報酬型など契約形態も柔軟なので、自社の状況に応じて選べます。
4. 社員紹介(リファラル採用)を制度化する
社員が知人や友人を紹介する「リファラル採用」は、採用コストを大幅に抑えられる手法として注目されています。
◎メリット
・採用にかかる広告費・手数料がほぼゼロ
・紹介者経由のためミスマッチが少ない
・離職率が低く、定着しやすい
▽制度づくりの工夫
・紹介インセンティブを設ける(例:入社後3ヶ月で3万円支給)
・社員に「どんな人を求めているか」を共有
・気軽に紹介できる仕組み(フォームやLINEなど)を用意
5. 採用ブランディングを始める
知名度が高くない中小企業こそ、採用ブランディングが力になります。
▽採用ブランディングとは?
求職者に「この会社、なんか良さそう!」と興味を持ってもらうための発信活動のこと。
取り組み例
・採用ページで社員の声や社風を伝える
・InstagramなどSNSで職場の雰囲気を発信
・採用メッセージや代表者の想いを文章・動画で掲載
コストはかからず、むしろ発信次第で自社にマッチした人からの応募を増やすことができます。
採用活動は「コスト」ではなく「未来への投資」
採用にかかるお金を「コスト」として見るだけでなく、「会社の未来をつくる投資」として考えることも大切です。
そのためには、ムダをなくし、必要なところにしっかりお金と時間を使うバランス感覚が求められます。
できることから少しずつ始めましょう
採用コストの最適化は、一気にすべてを変える必要はありません。
・まずは現状を「見える化」する
・少しずつ改善できるところから手をつける
・成果が出た施策を継続し、合わなかったものはやめる
そんな地道な積み重ねが、無理なくコストを最適化し、良い人材の採用につながっていきます。
「お金をかけたけど成果が出なかった…」という悩みから抜け出すために、ぜひ今回ご紹介した方法を参考にしてみてください。