「オンライン面接なら、普段の面接をそのまま画面越しで行えばよい」
と考えていませんか。
オンライン面接は、求職者が移動せずに参加でき、企業側も面接日程を調整しやすい採用手法です。
一方、画面越しでは表情や視線・声の細かな変化が読み取りにくく、通信の遅れが会話の印象に影響することもあります。
対面面接と同じ感覚で進めると、面接官の反応が冷たく見えたり、通信環境の問題を求職者本人の評価に結び付けたりするおそれがあります。
オンライン面接では、機材の準備だけでなく、進行方法や評価基準もオンライン用に調整しなければなりません。
本記事では、オンライン面接を実施する企業が押さえておきたい注意点とマナーを、面接前・面接中・面接後に分けて解説します。
オンライン面接は現在も学生から選ばれている
採用活動に定着したWeb面接
オンライン面接とは、Zoom・Microsoft Teams・Google MeetなどのWeb会議ツールを使い、企業と求職者が離れた場所から行う採用面接です。
「Web面接」と呼ばれることもあります。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに急速に普及しましたが、感染対策が主な目的ではなくなった現在も、採用活動の選択肢として定着しています。
選考段階によって変わる学生の希望
マイナビが2025年4月、2026年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象に実施した「2026年卒 大学生キャリア意向調査4月」では、面接方法を選べる場合、一次面接でWeb面接を希望する学生は79.3%でした。
一方、選考が進むにつれて対面を希望する割合が高くなり、最終面接では85.0%が対面面接を選んでいます。
この結果から分かるのは、オンライン面接と対面面接のどちらか一方が優れているわけではないということです。
学生は選考段階に応じて、効率とコミュニケーションの深さを使い分けています。
目的に合わせて面接形式を選ぶ
一次面接はオンラインにして参加の負担を抑え、最終面接や職場の雰囲気を伝えたい場面では対面にするなど、選考の目的に合わせた設計が必要です。
オンライン面接で企業側が感じやすい3つの難しさ
表情や感情が対面より伝わりにくい
オンラインでは、相手の表情が小さな画面に表示されます。
通信状況によって映像が粗くなれば、うなずきや表情の変化も読み取りにくくなります。
これは、求職者を見る企業側だけの問題ではありません。
求職者からも、面接官の反応が分かりにくくなります。
面接官が真剣に話を聞いているつもりでも、無表情のまま画面を見続けていると、
「自分の回答に興味がなさそう」「評価が低いのかもしれない」
と受け取られる可能性があります。
オンライン面接では、対面時よりも少し大きくうなずく、回答に対して短く言葉を返すなど、反応を意識して見せる必要があります。
画面に映らない情報を評価できない
オンライン面接で確認できるのは、主に顔・上半身・声・回答内容です。
入退室時の様子・立ち居振る舞い・全身の姿勢など、対面なら自然に目に入る情報は少なくなります。
そのため、画面上の表情や話し方を重視しすぎると、評価が第一印象に引っ張られやすくなります。
厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者本人の適性と能力を基準にするよう企業に求めています。
オンラインであっても、背景や通信環境・画面映りといった職務遂行能力に直接関係しない要素を、安易に合否へ結び付けてはいけません。
オンライン面接ほど、共通の質問項目と評価シートを準備し、「何を確認する面接なのか」を明確にしておくことが大切です。
通信の遅れが会話の印象を変える
Web会議では、相手の声が届くまでにわずかな遅れが生じます。映像と音声がずれることもあります。
映像を介した会話に関する研究では、約200ミリ秒という小さな遅れでも人が知覚でき、会話の間や動きの連携に影響する可能性が指摘されています。
質問後に返答が始まるまでの間が長いと、面接官は「反応が遅い」「質問を理解していない」と感じるかもしれません。
しかし、実際には通信の遅延や音声の重なりを避けるために、求職者が少し待っている場合もあります。
反応の速さだけで評価せず、通信環境の影響と本人の能力を切り分ける姿勢が欠かせません。
オンライン面接前に企業が準備すること
面接URLと参加方法を早めに送る
求職者への案内には、少なくとも次の内容を入れます。
■ 面接日時
■ 使用するWeb会議ツール
■ 参加URLと入室方法
■ アプリのインストールが必要か
■ カメラとマイクの使用有無
■ 面接の予定時間
■ 当日の緊急連絡先
■ 接続できない場合の対応方法
■ 参加する面接官の人数
「当日はオンライン面接です」だけでは、求職者が何を準備すればよいのか分かりません。
参加URLは前日までに再送すると、メールの見落としやURLの取り違えを防ぎやすくなります。
企業から招待する場合は、ログインしなければ参加できない設定になっていないか、社外の参加者にも権限が付与されているかを確認します。
面接官も当日と同じ環境で接続テストをする
接続テストでは、映像が表示されるかだけでなく、実際に相手からどう見え、どう聞こえるかを確認します。
特に注意したいのは音声です。
映像は多少粗くても会話は続けられますが、声が途切れたり反響したりすると、回答内容を正確に把握できません。
パソコンの内蔵マイクで周囲の音を拾ってしまう場合は、マイク付きイヤホンやヘッドセットを使用します。
会議室で複数のパソコンから接続するとハウリングが起きやすいため、音声を出す端末は1台に絞るなどのルールも必要です。
そのほか、次の項目を確認しておきましょう。
■ カメラが目線に近い高さにあるか
■ 顔が暗く映っていないか
■ 逆光になっていないか
■ 背景に社外秘資料や個人情報が映らないか
■ パソコンやスマートフォンの通知音を切ったか
■ 表示名が面接官として適切か
■ 面接URLが正しいか
■ 画面共有する資料がすぐ開けるか
面接官の顔を明るく見せたい場合、強い照明を用意する必要はありません。
窓や照明を顔の正面側に置くだけでも、表情が見えやすくなります。
通信トラブル時の対応を決める
通信トラブルが起きてから対応を相談すると、求職者を長時間待たせてしまいます。
事前に、「音声が聞こえない場合はチャットで連絡する」「5分以上接続できなければ採用担当者から電話する」「復旧しなければ再調整する」
といった判断基準を決めておきます。
当日の案内例は、次のような内容です。
『音声や映像に不具合が生じた場合は、遠慮なくお知らせください。接続が切れた場合はこちらから再度ご案内します。不具合によって選考が不利になることはありません』
この一言があるだけでも、求職者は通信状態を気にしすぎずに回答できます。
録画する場合は目的と扱いを説明する
オンライン面接を録画し、欠席した面接官との情報共有や面接官研修に使いたい企業もあります。
ただし、求職者に知らせず録画する運用は避けるべきです。
録画する場合は、録画の目的・閲覧できる人・保存期間・保管方法・削除時期を整理し、開始前に本人へ説明して同意を得ます。
Zoomにも、ホストが録画を開始した際に参加者へ同意を求める機能があります。
録画データには顔や声・経歴などの個人情報が含まれます。
「便利だから保存しておく」のではなく、利用目的に照らして本当に録画が必要かを先に検討してください。
オンライン面接中に意識したいマナー
開始時に音声と映像を確認する
求職者が入室したら、すぐに質問を始めず、まず音声と映像の状態を確認します。
「こちらの声は聞こえていますか」「映像は問題なく見えていますか」
と、双方で確認した後、面接官の氏名と所属・面接の流れ・終了予定時刻を伝えます。
オンラインでは名刺交換や受付での会話がないため、求職者は面接官が誰なのか分からないまま面接を受けることがあります。
面接官が複数いる場合は、一人ずつ簡潔に自己紹介をすると安心感につながります。
相づちを声と表情で少し大きく示す
対面面接では、小さなうなずきでも「話を聞いている」と伝わります。
オンラインでは、その反応が画面上で見えにくくなります。
求職者が話している間は、うなずきを少し大きくし、「はい」「ありがとうございます」などの短い反応を適度に入れます。
ただし、相づちが求職者の音声と重なると聞き取りにくくなるため、毎回声を出す必要はありません。
相手が話し終えた直後は、一呼吸置いてから次の質問へ移ると、通信の遅れによる発言の重なりを防げます。
目線だけで「態度」を判断しない
オンライン面接では、画面に映った相手の顔を見ると、カメラには下向きの視線として映ります。
反対にカメラを見ると、相手の表情を確認できません。
2024年に公表された模擬オンライン面接の研究では、カメラではなく画面へ視線を向けた映像のほうが、評価者から低い評価を受けたと報告されています。
ただし、大学生12名の映像を会社員38名が評価した小規模な実験であり、結果をそのまま全ての採用面接へ当てはめることはできません。
ここで企業が注意したいのは、求職者へ「カメラを見続けること」を求めるのではなく、オンラインでは自然なアイコンタクトが成立しにくいと知っておくことです。
視線が少し下がっている、カメラから目が外れるといった動きだけで、「自信がない」「話を聞いていない」と評価しないようにしましょう。
メモを取るときは先に伝える
パソコンで評価内容を入力していると、求職者からは、面接官が別の作業をしているように見えることがあります。
キーボードの音がマイクに入れば、話を聞いていないという印象を与えかねません。
入力を始める前に、「お話を正確に記録するため、途中でメモを取らせていただきます」と伝えておくと、不要な誤解を防げます。
面接官が複数いる場合も、求職者が話している裏で社内チャットを続けるのは避けます。
視線の動きや通知音は、想像以上に相手へ伝わります。
画面上の環境を本人の能力と混同しない
家族の声・工事の音・生活用品が映った背景など、求職者が完全にはコントロールできない事情もあります。
面接中に一時的な雑音が入ったとしても、職務上必要な能力とは関係がありません。
求職者が落ち着いて話せる状況かを確認し、必要であれば少し中断する、再接続するなど柔軟に対応します。
通信が不安定なときに表情が固まったことや、音声が途切れて回答が短く聞こえたことも、本人のコミュニケーション能力とは分けて評価すべきです。
オンラインで伝わらない会社情報を補う
求職者は、オンライン面接だけではオフィスの雰囲気や社員同士の関係性をつかみにくくなります。
仕事内容を説明するだけでなく、「配属予定部署にはどのような社員がいるか」「普段はどのように相談や情報共有をしているか」「入社後は誰が仕事を教えるか」など、働く場面を具体的に伝えます。
必要に応じて、オフィスの写真・1日の仕事の流れ・配属部署の構成などを短い資料にまとめて画面共有する方法もあります。
ただし、説明時間が長くなりすぎると一方通行になるため、求職者からの逆質問の時間は別に確保してください。
オンラインでも評価精度を落とさない質問の工夫
質問を増やすより深掘りを重視する
オンライン面接で得られる情報が少ないからといって、質問数を増やせばよいわけではありません。
質問を詰め込みすぎると、求職者の回答を深掘りできず、表面的な確認で終わります。
有効なのは、全員に共通して聞く質問と、回答に応じて掘り下げる質問を分ける方法です。
例えば、過去の経験を聞く場合は、次の順番で確認します。
1.どのような状況だったか
2.本人はどのような役割を担ったか
3.何を考え、どのように行動したか
4.その結果、何が起きたか
5.経験から何を学び、次にどう生かしたか
回答内容を事実に沿って整理できるため、表情や話し方だけに評価が引っ張られにくくなります。
面接形式が変わっても評価基準はそろえる
また、オンライン面接と対面面接で評価項目を変えすぎないことも大切です。
「論理的に説明できる」「周囲と協力して行動できる」など、採用基準そのものは共通にし、情報を引き出す方法だけを調整します。
オンライン面接後の対応にも企業の姿勢が表れる
終了前に次の流れを丁寧に伝える
面接が終わる前に、結果連絡の予定日・連絡方法・次の選考形式を伝えます。
終了時は「以上です」と突然接続を切らず、求職者から確認したいことがないかを聞き、参加へのお礼を伝えてから退室を案内します。
面接官側が先に退出すると、求職者が取り残されたように感じる場合があるため、「こちらで終了しますので、そのままご退出ください」と声をかけるとスムーズです。
評価記録と数値から運用を見直す
面接後は、通信状態や画面映りに関する感想ではなく、あらかじめ決めた評価項目に沿って記録します。
「雰囲気が暗かった」「反応が遅かった」といった曖昧な記述がある場合は、通信の影響ではないか、職務との関係を説明できるかを確認してください。
オンライン面接の運用改善には、次の指標が役立ちます。
■ 面接参加率
■ 接続トラブルの発生件数
■ 面接後の選考辞退率
■ 面接官ごとの評価差
■ 求職者アンケートの満足度
■ オンライン面接から次の選考への移行率
接続トラブルが多ければ案内文やツール設定を見直し、特定の面接官だけ辞退率が高ければ、進行方法や対応を確認します。
オンライン面接を実施した回数ではなく、その後の選考行動まで見ることが改善につながります。
【まとめ】
オンライン面接は、移動時間や会場の制約を減らし、遠方の求職者とも接点を持てる便利な採用手法です。
一方、表情や視線が伝わりにくく、通信の遅れや画面上の環境が評価に影響しやすいという特徴があります。
企業が最初に取り組みたいのは、面接官個人の気配りに任せるのではなく、事前案内・トラブル時の対応・質問項目・評価基準・終了時の案内を共通化することです。
そのうえで、一次面接はオンライン→最終面接は対面にするなど、それぞれの良さを生かして選考を設計すると、求職者の負担を抑えながら相互理解も深めやすくなります。
面接官ごとに進行や評価が異なる場合は、面接官向けのチェックリストや評価シートを作る方法があります。
自社だけで面接フローを整理することが難しい場合は、採用支援会社へ相談し、選考全体を見直すことも選択肢の一つです。
ジーズコンサルティングでは、採用計画の整理から採用ツールの企画・制作、運用まで、企業の状況に合わせた採用支援を行っています。
< 出典 >
株式会社マイナビ
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「Dynamics of Remote Communication: Movement Coordination in Video-Mediated and Face-to-Face Conversations」
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