新卒採用に携わると、毎年のように学生の志向や傾向が変わっていることを感じるのではないでしょうか。
とくに2027年卒業予定の「27卒」学生は、選考中の納得感をとても大切にしている傾向があります。
この“納得感”とは、「この会社は自分に合っている」「面接でしっかり理解してもらえた」という感覚のこと。
就職活動における不安を和らげ、自分の決断に自信を持てるようになるため、学生たちは企業とのコミュニケーションを重視しています。
本記事では、選考中の歩留まり(=途中辞退や離脱)を改善するための面接や説明会の工夫について、わかりやすく解説していきます。
なぜ“納得感”が歩留まりに影響するのか?
学生の不安が離脱の原因に
27卒世代は、コロナ禍を小中学生として過ごした世代であり、人との接触が少ない環境で育ってきたこともあり、「自分を理解してくれるか」「この会社で安心して働けるか」を非常に重視しています。
つまり、選考の途中で「なんだかモヤモヤする」「自分のことを見てくれていない気がする」と感じると、すぐに辞退してしまう可能性が高いのです。
「選考中コミュニケーション」が決め手になる
学生の不安を和らげるためには、「選考の途中段階でのコミュニケーション=“選考中コミュニケーション”」丁寧に設計することが重要です。
これは、説明会や面接といったイベントそのものの設計はもちろん、選考間のメールや連絡、フィードバックなども含まれます。
歩留まりを改善するための「説明会」の工夫
1. 納得感を得られるコンテンツにする
説明会では、「企業の魅力をアピールすること」に加えて、「学生が自分自身を重ねやすい情報」を提供することが大切です。
学生が知りたいのは「自分が働く姿」
経営理念や沿革も大切ですが、27卒学生が知りたいのは、「自分がこの会社でどんな風に働けるか」です。
具体的には、以下のような情報が喜ばれます。
- 若手社員の1日のスケジュール
- 入社後のキャリアパス
- 上司との関係性や雰囲気
- 実際の業務のリアルな一コマ
共感できる社員の登壇が効果的
説明会に登壇する社員は、学生と年齢が近い若手社員が理想です。
「自分と似ている」と感じてもらえると、自然と納得感が高まり、歩留まりの改善にもつながります。
2. 質問しやすい雰囲気を作る
説明会の最後に「質問タイム」を設けている企業も多いですが、学生は緊張してなかなか手を挙げられないことも。
そのため、匿名で質問できるツール(例:Slido、Googleフォームなど)を使ったり、事前に質問を募っておく工夫を取り入れると、学生の疑問にしっかり応えることができます。
歩留まりを改善するための「面接」の工夫
1. 「評価する」から「理解する」へ
選考とはいえ、面接は“お見合い”のようなもの。学生が「評価される場」と感じると緊張してしまい、納得感が低下します。
そこで重要なのが、「相手を理解しようとする姿勢」を見せることです。
具体的な工夫
- 一方的な質問ではなく、「なぜそう思ったの?」と深掘りする
- 話す内容だけでなく、感情の動きにも注目する
- 面接官自身の価値観も少し共有する(学生に安心感を与える)
2. フィードバック面接の導入
もし体制に余裕があるなら、フィードバック面接の導入もおすすめです。
フィードバック面接とは、選考結果に関わらず、「良かった点」や「改善点」を本人に伝える面接のこと。
これにより、学生は「ちゃんと見てくれていた」と感じ、納得感が高まります。
また、選考を辞退する場合でも、前向きな印象を残せるため、口コミ対策にもなります。
「選考と選考の間」にも注目しよう
1. 選考中の連絡スピードは納得感に直結する
たとえば、1次面接が終わってから結果通知までに5日以上かかると、学生は「この会社は本当に自分に興味あるのかな?」と不安になります。
選考の合否連絡は可能な限り早く、またその内容も丁寧に伝えることが大切です。
2. 選考プロセスの見える化
どのタイミングで何があるのかが曖昧だと、学生は不安を感じます。
そこで、事前に選考の全体像を共有することが効果的です。
例:
【選考フロー】
①会社説明会(3月上旬)
②1次面接(3月中旬)
③グループディスカッション(3月下旬)
④最終面接(4月上旬)
⑤内々定(4月中旬)
このように明示することで、学生も準備しやすく、納得感を持って選考に臨むことができます。
企業側の“選ばれる努力”が重要な時代に
かつては「学生が企業を受ける」ことが一般的でしたが、今は「企業も学生に選ばれる」時代です。
とくに27卒学生は、納得感を得られなければすぐに別の企業へと移ってしまう傾向があります。
だからこそ、企業側の姿勢・対応が問われる時代ともいえるのです。
実際に歩留まりが改善した事例紹介
ここでは、実際に「選考中コミュニケーション」を改善し、歩留まりが向上した企業の事例をご紹介します。
事例①:若手社員の登壇で辞退率が30%改善
あるIT企業では、説明会に若手社員を2名登壇させ、リアルな働き方や失敗談をシェアするようにしたところ、1次面接への参加率が30%以上改善しました。
事例②:面接後フィードバックで学生の志望度UP
人材業界の企業では、1次面接後にフィードバック面談を取り入れたところ、「企業からの本気度を感じた」との声が多数寄せられ、内定辞退率が前年比で20%減少したとのことです。
歩留まり改善は「寄り添い」の積み重ねから
27卒学生の歩留まりを改善するために必要なのは、特別な仕組みや最新のテクノロジーではありません。もっとも大切なのは、学生に「この会社に理解されている」「ここでならやっていけそう」と感じてもらうことです。
メールの文章一つ、説明会の一言、面接時のリアクションなど、少しの工夫で“納得感”は大きく変わります。
ぜひ、日々の選考の中で「学生の気持ちに寄り添ったコミュニケーション」を意識してみてください。それが、企業の魅力を伝えるいちばんの近道です。