「給与では大手企業にかなわない」「求人票に書ける福利厚生が少なく、他社との違いを出しにくい」と感じたことはありませんか?
採用競争が激しくなるなか、福利厚生は、従業員のためだけの制度ではなくなっています。
求職者が入社先を選ぶ際の判断材料であり、自社の働き方や従業員に対する考え方を伝える採用広報の一つでもあります。
なかでも注目したいのが、ホテルやリゾート施設を割引価格で利用できる「旅行×福利厚生」のサービスです。
制度の魅力が伝わりやすく、休日の充実だけでなく、出張・研修合宿・ワーケーションなどにも活用できます。
ただし、旅行系の福利厚生を導入しただけで、応募数や定着率がすぐに向上するとは限りません。
採用したい人材の価値観に合っているか、従業員が実際に使えるか、導入後の利用を促せるかまで確認する必要があります。
本記事では、採用において福利厚生が注目される背景と、旅行系福利厚生の特徴・サービスを選ぶ際の確認ポイント・採用活動での伝え方を解説します。
福利厚生は入社先を決める判断材料になっている
制度の種類を理解する
福利厚生は、法律で企業に実施が義務づけられている「法定福利厚生」と、企業が任意で設ける「法定外福利厚生」に分けられます。
健康保険や厚生年金保険・雇用保険などが法定福利厚生です。
一方、住宅手当・食事補助・特別休暇・資格取得支援・宿泊施設の優待といった制度は、法定外福利厚生にあたります。
採用活動で企業ごとの差が表れやすいのは、後者の法定外福利厚生です。
2026年卒学生の内々定承諾の決め手は「福利厚生」が最多
マイナビの「2026年卒 大学生キャリア意向調査7月」によると、内々定を承諾した決め手として最も多かった回答は「福利厚生の充実」で全体の37.9%となりました。
これは、「希望する勤務地で働ける」の31.1%、「給与や賞与が高い」の29.1%を上回っています。
就職活動の初期には給与が注目されやすくても、複数の企業を比較し、最終的な入社先を決める段階では、働く環境や福利厚生も大きな判断材料になっていることが分かります。
別のマイナビ調査では、2026年卒の学生が企業に安定性を感じるポイントとして、「福利厚生が充実している」が57.3%で最多でした。
「安心して働ける環境である」の52.5%や「業界大手である」の44.1%を上回っています。
福利厚生の充実は、金銭的なメリットだけでなく、「従業員を長く支える会社」「安心して働ける会社」という印象にもつながるようです。
給与で採用競争に対応することが難しい企業も
マイナビの「2026年卒 企業新卒採用予定調査」では、企業の78.1%が新卒採用の環境について「厳しくなる」と回答しました。
また、54.1%の企業が初任給を引き上げる予定としています。
初任給を引き上げる企業が増えるほど、給与だけで他社との差をつけることは難しくなります。
特に中小企業では、大手企業と同じ水準まで継続的に給与を引き上げることが、経営上の負担になる場合もあります。
もちろん、福利厚生は給与の代わりではありません。
基本給や昇給・休日・労働時間などの条件を十分に整えないまま目新しい制度だけを追加しても、求職者の不安は解消できないためです。
そのうえで、給与以外の魅力を増やしたい企業にとって、利用場面が分かりやすく、従業員がメリットを実感しやすい福利厚生は有効な選択肢になります。
「旅行×福利厚生」とは
旅行を福利厚生にする新しい選択肢
旅行系の福利厚生とは、企業が契約したサービスを通じて、従業員がホテルや旅館・レジャー施設などを優待価格で利用できる制度です。
会員限定価格で宿泊施設を利用できるほか、通常価格から30%~80%割引となるプランも用意されています。
割引率は施設や宿泊日程によって異なるため、すべての予約に最大割引が適用されるわけではありません。
それでも、一般的な宿泊予約サイトと比べて価格差が分かりやすければ、従業員が「使ってみたい」と感じるきっかけをつくりやすくなります。
旅行に特化しているため利用場面をイメージしやすい
総合型福利厚生サービスには、飲食・育児・介護・学習・レジャーなど、数多くのメニューが用意されています。
選択肢が豊富な一方で、従業員がどの制度を使えるのか把握できず、利用されないこともあります。
旅行特化型の福利厚生は、「旅行や宿泊の際に利用できる制度」として目的が分かりやすい点が特徴です。
求人票や会社説明会でも、制度の内容を短時間で伝えやすくなります。
たとえば、単に「会員制福利厚生サービスあり」と記載するだけでは、入社後の利用イメージを持ちにくい場合があります。
次のように具体的な利用場面を示すことで、働き始めた後の生活をより想像しやすくなります。
■ 休日の家族旅行や友人との旅行に利用できる
■ 一流ホテルやリゾート施設を会員限定価格で予約できる
■ 出張に休日を組み合わせて滞在を延ばす際にも使える
■ 対象となる家族も優待価格で利用できる
※上記は一例です。利用できる内容は、サービスによって異なります。
旅行系福利厚生が採用強化につながる理由
旅行系福利厚生の特徴は、制度の利用によって得られる体験を具体的に伝えられる点です。
「福利厚生が充実しています」という表現だけでは、他社との違いは伝わりません。
どのような場面で使え、従業員にどの程度のメリットがあるのかまで示すことで、採用上の訴求力が生まれます。
求人票や会社説明会で他社との差を示しやすい
求人票に「社会保険完備」「交通費支給」「健康診断」とだけ書かれているケースは少なくありません。
しかし、このうち社会保険は一定の要件を満たす企業に義務づけられており、他社との明確な違いにはなりにくい項目です。
旅行系福利厚生であれば、実際の施設例や利用方法、価格例などを使って具体的に紹介できます。
写真との相性も良いため、採用サイト・会社説明会のスライド・SNSなどでも伝えやすいでしょう。
特に、業界内で仕事内容や給与条件が似ている企業では、福利厚生の違いが興味を持ってもらうきっかけになる可能性があります。
会社が大切にしている価値観を表現できる
福利厚生から伝わるのは、制度の機能だけではありません。
旅行系福利厚生を導入し、実際に休暇を取得して利用できる環境を整えることで、「仕事だけでなく、従業員の休日や家族との時間も大切にする会社」という姿勢を示すことができます。
一方で、制度があっても休暇を取りにくい雰囲気があったり、上司が利用に前向きでなかったりすると、採用時に伝えた内容と入社後の実態にギャップが生じる可能性があります。
福利厚生を採用広報に使う場合は、制度の有無だけでなく、利用しやすい職場づくりも必要です。
内定承諾後の不安を減らす情報にもなる
福利厚生は、母集団形成だけでなく、内定者フォローでも活用できます。
内定者向けの面談や交流会で、先輩社員が制度をどのように利用しているか紹介すると、入社後の生活をイメージしやすくなります。
旅行好きの社員だけでなく、帰省・家族の宿泊・出張など、複数の利用場面を示すことがポイントです。
ただし、「この制度があるから入社してください」と強く押し出すのは避けたいところです。
仕事内容・配属・育成環境・休日などを説明したうえで、働きやすさを支える一つの制度として紹介すると自然です。
従業員満足度や定着率の向上にも活用できる
入社後も続く従業員へのメリット
旅行系福利厚生は、採用時だけでなく、入社後の従業員にも継続して価値を提供できます。
旅行の費用負担が軽くなれば、休日の過ごし方の選択肢が増えます。
家族も利用できる制度であれば、従業員本人に限らず、家族にとっても勤務先の福利厚生を実感する機会になります。
定着施策の一つとして捉えることが大切
ただし、旅行系福利厚生と離職率の低下を直接結びつける公的な調査は限られています。
制度を導入しただけで定着率が改善すると断定することはできません。
定着につなげるには、給与や評価・上司との関係・業務量・キャリア形成など、離職に影響するほかの要因もあわせて見直す必要があります。
旅行系福利厚生は、従業員体験を良くする施策の一つとして捉えるのが適切です。
ワーケーションや研修合宿にも利用できる
個人利用にとどまらない活用方法
旅行系福利厚生の用途は、従業員の個人旅行だけではありません。
宿泊施設に仕事を持ち込み、滞在先で働く「ワーケーション」や、研修合宿・チームビルディング・報奨旅行などにも活用できます。
多様な働き方を支える可能性
観光庁は、企業がワーケーションを導入する主な理由として、従業員の心身のリフレッシュによる仕事の質・効率の向上と、多様な働く環境の提供を挙げています。
優秀な人材の確保や若手社員の採用・定着を期待する企業もみられます。
制度化する前に確認すべきポイント
一方、ワーケーションは、宿泊場所を確保するだけで実施できるものではありません。
観光庁の調査では、ワーケーションの認知率が約8割であるのに対し、実際の体験者は4.3%にとどまりました。
興味・関心がある人も28.2%で、すべての従業員が希望しているわけではありません。
導入する場合は、次の項目を事前に整理します。
1. ワーケーション中の勤務時間と休暇の区分
2. 交通費、宿泊費、通信費の負担者
3. 勤怠管理と業務報告の方法
4. 情報セキュリティと通信環境
5. 労災が発生した場合の取り扱い
6. 対象者と利用できる回数
7. 制度を利用しない従業員との公平性
いきなり全社で導入するのではなく、まずは希望者を対象に小規模に試し、業務への影響や利用者の声を確認することが大切です。
旅行系福利厚生を選ぶときの確認ポイント
実際の宿泊価格
「最大80%割引」などの最大値だけで判断せず、従業員が利用しそうな地域と日程で料金を比較します。
平日だけでなく、土日祝日・夏休み・年末年始などの価格も確認しましょう。
一般的な宿泊予約サイトより安い場合でも、交通費を含めると負担が大きくなることがあります。
予約できる施設と地域
掲載施設数が多くても、従業員が行きたい地域に施設がなければ利用は進みません。
従業員への簡単なアンケートで、よく旅行する地域・帰省先・出張先・希望する施設の価格帯を聞いておくと選びやすくなります。
高級ホテルだけでなく、家族旅行や出張に使える価格帯がそろっているかも確認したい点です。
利用条件と予約のしやすさ
対象者・家族の利用範囲・利用回数・予約可能期間・キャンセル条件・繁忙期の除外日を確認します。
正社員以外の契約社員・パート・アルバイト・業務委託などを対象にできるサービスもあります。
雇用形態による違いを設ける場合は、制度の目的と公平性を整理したうえで決定します。
導入後の周知支援
福利厚生は、導入して終わりではありません。
初回説明会・利用ガイド・社内告知用の画像や文章・問い合わせ対応など、利用を促す支援があるか確認します。
人事担当者の運用負担も見落とせません。
従業員の追加や削除を簡単に行えるか、管理画面でどの情報を確認できるか、個人の旅行先や同行者などのプライバシーが守られるかも比較しましょう。
利用状況を確認できるか
導入後は、登録率や利用率を確認します。
利用者が少ないからといって、制度への関心がないとは限りません。
使い方を知らない・予約方法が難しい・希望する地域に施設がない・休暇を取りにくいといった原因も考えられます。
利用率だけでなく、従業員アンケートで満足度や利用しない理由を調べると、改善策を検討しやすくなります。
採用活動では「制度名」より利用場面を伝える
制度の内容を具体的に伝える
旅行系福利厚生を採用活動で紹介する際は、「旅行の割引があります」だけで終わらせず、対象者・利用できる施設・割引の範囲・利用例を伝えます。
求人票や採用サイトには、次のような情報を掲載できます。
■ 全国のホテルやリゾート施設を会員限定価格で利用可能
■ 休日の個人旅行や家族旅行に利用可能
■ 対象となる家族の範囲
■ 利用回数の上限の有無
■ 実際に利用した社員の感想
■ 利用を促すための社内案内や休暇取得の方針
期待値とのずれを防ぐ見せ方
割引率を掲載する場合は、「対象施設・日程によって異なる」といった条件も添えます。
最大値だけを大きく表示すると、入社後に期待とのずれが生じるおそれがあります。
ほかの魅力と組み合わせて訴求する
また、旅行に関心がない求職者もいます。
旅行系福利厚生だけを「当社最大の魅力」とするのではなく、仕事内容・職場環境・育成制度・休暇制度などと組み合わせて伝えることが大切です。
【まとめ】
福利厚生は、従業員に提供する付加的なサービスではなく、求職者が企業の安定性や働きやすさを判断する材料になっています。
旅行系福利厚生は、休日の旅行に加え、家族の宿泊・出張・研修合宿・ワーケーションなど、利用場面を具体的に伝えやすい制度です。
通常の宿泊価格から30%~80%割引となる施設を扱う旅行特化型サービスもあり、価格面で従業員がメリットを感じやすい点に特徴があります。
導入を検討する際は、最大割引率だけでなく、従業員が利用したい地域の施設数・土日や繁忙期の価格・予約条件・対象となる家族・社内への周知支援まで確認してください。
最初に取り組みたいのは、従業員と採用ターゲットが福利厚生に何を求めているかを把握することです。
その結果、旅行や休日の充実に対する関心が高ければ、旅行系福利厚生は、採用と従業員満足の両方に活用できる施策となります。
< 出典 >
株式会社マイナビ
「2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>」
「2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<入社予定先の決定と不安>」
「2026年卒 企業新卒採用予定調査」
観光庁
「ワーケーション&ブレジャー 企業・従業員の皆様」
「ワーケーション&ブレジャー 受入地域・観光事業者の皆様」