
新卒採用がひと段落し、4月から25卒の新入社員がいよいよ入社してきます。
この時期、多くの企業が一息つきたいタイミングではありますが、「採用は入社して終わりではない」と、長年人事に携わってきた皆さまであれば、よくご存じのはずです。
いくら優秀な人材を採用できても、早期離職をしてしまっては元も子もありません。今回は、新卒社員の定着を促すために、入社後に特に気を付けたい3つのポイントをお伝えします。
「配属後のフォロー体制」を定期的に見直す
配属後のフォロー体制は、新卒社員の“会社に対する第一印象”を決定づける重要なポイントです。
研修期間は手厚くサポートされても、配属された途端に「現場任せ」になってしまうケースは少なくありません。実際に、「配属後の孤独感」が早期離職の要因になっているという声も多く聞かれます。
研修(育成)担当者の準備は万全か?
研修担当者は、新卒社員にとって最も身近な存在であり、メンターとも言える存在です。そのため、担当者のスキルやマインドセットが、そのまま新卒社員の定着に影響します。
・担当者向けに、指導法や関わり方に関する事前研修を実施しているか?
・業務に追われすぎていないか?(教える時間を確保できる余裕があるか?)
・本人の育成意欲や相性を踏まえて担当者をアサインしているか?
これらの観点をあらためて確認し、育成する側へのサポート設計にも目を向けていきましょう。
フォロー面談は定期的に、上司・人事が両輪で
配属後は、「上司との1on1」だけでなく、人事主導でのフォロー面談も併用することが効果的です。
現場の上司には言いづらいことでも、人事に対しては本音を話してくれるケースが多くあります。面談の頻度は、以下のようなイメージが目安です。
・配属1ヶ月後:職場や業務への適応状況を確認
・配属3ヶ月後:やりがいや成長実感の有無をヒアリング
・配属6ヶ月後:中長期的なキャリアへの不安・期待を共有
上司と人事が連携しながらフォローを重ねることで、「自分はちゃんと見てもらえている」と感じてもらえる安心感が生まれます。
「フィードバックの質と伝え方」に気を配る
新卒社員は、社会人としての経験がまったくない状態で職場に飛び込んできます。
そのため、「自分の成長がわからない」「何が正解かわからない」という不安を抱えやすい状態にあります。
“できていること”を言葉にして伝える
新卒社員には、「今の自分の働きが何の役に立っているのか」を伝えてあげることが効果的です。
日々の業務に追われる中では、どうしても「できていない点」に目がいきがちですが、ポジティブなフィードバックを意識的に増やすことが定着率向上のカギです。
たとえば――
×「ここはまだ理解が足りないね」
◎「まだ難しい部分はあるけれど、相手の話をしっかり聞けているところはすごくいいね」
というように、評価だけでなく、“その人らしさ”を見つけて褒める言葉を届けることが大切です。
ネガティブな内容も「未来志向」で
改善点や注意点を伝えるときは、相手が前向きに受け取れるように配慮が必要です。
ポイントは、「責める」のではなく、「どうしたら良くなるか」を一緒に考えるスタンスです。
・「このやり方だと○○なリスクがあるよね。どう工夫できそう?」
・「ここまではよく頑張ったね。次は○○に挑戦してみようか」
というように、“成長を応援するトーン”で伝えることが信頼関係につながります。
「企業文化や価値観」の理解を深める仕掛けをつくる
早期離職の理由として、「思っていた会社と違った」「社風に合わなかった」といった“曖昧な違和感”を挙げるケースが多く見られます。
言語化と共有の機会を増やす
企業文化や価値観は、入社前の説明会や面接で伝えきれていないこともあります。
だからこそ、入社後にあらためて時間を取って言語化・共有する場を設けることが重要です。
・経営理念や行動指針を、日常業務に落とし込んだ事例を紹介する
・ロールプレイやグループディスカッションを通じて、「うちの会社らしさ」を体感させる
・先輩社員が語る「自分がこの会社で感じた価値観とのマッチ体験」を共有する
こうした取り組みを通じて、会社が大切にしている価値観を“自分のもの”として理解してもらうことが、新卒社員の自立と定着に大きく貢献します。
「何を大切にしてほしいか」を繰り返し伝える
文化や価値観は、1回伝えただけでは浸透しません。
日々のコミュニケーションや上司の言動の中で、“繰り返し刷り込むこと”が浸透の鍵になります。
たとえば、会議等での意思決定理由に「会社として大切にしている考え方」を添えるといった形で、具体と抽象を行き来しながら繰り返し伝えることが、文化の定着に効果的です。
「定着のための仕組み」は最初の3ヶ月が勝負です!
新卒社員が職場に慣れ、自分の居場所を感じられるようになるまでには、一定の時間がかかります。
特に最初の3ヶ月間は、“定着のゴールデンタイム”とも言える大切な時期です。
人事担当としての真価が問われるのは、採用活動よりも“入社後のサポート”かもしれません。今こそ、新卒社員が安心して力を発揮できる環境づくりを、全社で取り組んでいきましょう。