インターンシップは学生が企業や仕事を理解するための貴重な機会ですが、経団連によるインターンシップの「新ルール」により、その内容や実施方法が見直されました。企業が提供するインターンシップは「オープンカンパニー」「キャリア教育」「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」「高度専門型インターンシップ」の4タイプに分類されており、それぞれ異なる目的や内容が求められます。この記事では、これらの新ルールの概要と4タイプの特徴について解説していきます。
インターンシップの目的と役割
インターンシップの基礎
インターンシップとは、学生が企業での実務を体験することで、職業観を育むとともに、自己の能力や興味に気づくためのプログラムです。採用活動とは異なり、学生の学業やキャリアの発展に寄与する「学びの場」としての役割が重視されています。企業側も、将来の採用候補として学生に会社の魅力を知ってもらう重要な機会とされています。
新ルールの背景と目的
1. なぜ新ルールが導入されたのか?
これまでインターンシップは採用活動の一環として活用されてきましたが、経団連が示した新ルールでは「キャリア形成活動と採用活動の分離」が求められています。これにより、学生がキャリア形成活動を通じて職業選択を広く考えられるよう配慮し、また学業に支障をきたさない運営が求められるようになりました。
2. 新ルールの主な変更点
新ルールでは、インターンシップは「学びの場」として位置づけられています。「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」「高度専門型インターンシップ」では学生の個人情報を取得することが可能ですが、広報解禁日前の選考を目的とした情報の活用は基本的に禁止となっています。学生が自分に適した業界や職種をじっくりと見極め、また学業に支障をきたさないようにするという狙いがあります。
3. 採用活動との分離
インターンシップはあくまで業界や企業理解のためのプログラムであり、採用活動と混同されないことが重視されています。新ルールの導入により、企業はインターンシップ中の評価基準を学生に開示し、選考活動とは別の期間に行うことが推奨されています。
インターンシップの4つのタイプ
新ルールに基づき、インターンシップは次の4つのタイプに分類され、それぞれに異なる目的や内容が設定されています。それぞれの特徴を理解することで、目的に合ったインターンシップを実施することが可能です。
1. オープンカンパニー
概要:
オープンカンパニーは、学生に企業や業界について知ってもらうための機会を提供するプログラムです。実務体験よりも、企業文化や社員との交流を通じて、職場の雰囲気や業界の概要を知ることを目的としています。
特徴:
- 短期間で実施されることが多く、1日や数日間のプログラムが一般的です。
- 職場見学や座談会、社員インタビューなどが行われ、学生は企業文化や業界の動向を理解できるようになります。
- 学生が気軽に参加しやすい形式で、将来の進路選択の初期段階で役立ちます。
2. キャリア教育
概要:
キャリア教育型インターンシップは、学生が働くことについて考え、社会での自身の役割を理解するための学びを提供します。自己理解や社会人基礎力の向上が目的で、職業選択の幅を広げる支援が重視されています。
特徴:
- 実務経験を含まず、ワークショップ形式での自己分析やキャリアプランニングが行われることが多いです。
- 学生が社会人として必要な基礎力(コミュニケーション能力、チームワーク、問題解決能力など)を養う内容が中心です。
- 社会人になる前に自分の興味や適性を見つけるための場として提供されるため、大学1・2年生など早期の学生にも適しています。
3. 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
概要:
特定の業界や職種の実務体験を通じて、学生が基礎的なビジネススキルや専門知識を学ぶことのできる、就業体験の一環です。
特徴:
- 業界や職種に関連する具体的なプロジェクトや業務の一部を担当することが多いです。
- 学生は仕事を通じて、社会人として必要なスキル(汎用的能力)を実務で体得することができます。
- 学生のスキルアップに寄与し、就職活動前の経験として価値があるため、大学3年生や4年生向けのプログラムとして提供されることが一般的です。
4. 高度専門型インターンシップ
概要:
学生が特定の分野や高度なスキルを求められる実務に取り組むプログラムです。専門性が高く、例えば医療、IT、エンジニアリングといった高度な専門知識を求める業界の実務経験を提供するため、職業に対する意識がより明確な学生に適しています。
特徴:
- 実務に深く関わり、特定の専門分野に特化したスキルを発揮・応用する場が設けられています。
- 学生が自身の専門知識を生かすことが求められ、企業側もその成果を期待しています。
- 大学院生や高学年の学部生など、専門知識を有する学生を対象とし、採用活動とは分離した独立したプログラムとして提供されることが多いです。
人事担当者が知っておくべきポイント
1. インターンシップ設計の見直し
4つのタイプに基づき、インターンシップの内容や目的を再評価し、学生が参加しやすく、学びの場として適切な設計が求められます。例えば、「オープンカンパニー」では企業紹介がメインとなるため、学生が自由に質問しやすい環境を整えると効果的です。
2. 採用活動とインターンシップの明確な分離
インターンシップを通じて学生を評価することやフィードバックを行うことは可能ですが、採用選考とは関わりが無いことを明確に示すことが必要です。どれだけ魅力的な学生であっても、採用を意識した評価や面接は広報解禁日以降に行う配慮が必要となります。
3. 学生へのサポートと情報提供
学生が自分のキャリアについて考える機会を得られるよう、インターンシップのフィードバックや個別のアドバイスなどを行うと効果的です。座談会や交流会なども組み合わせることで、学生にとって企業や業界について理解しやすくなります。
新ルールを踏まえたインターンシップの方向性
1. 「学び」を重視する方向へ
今後、インターンシップは「学び」を重視したものが主流となるため、参加学生にとっても自己成長や自己理解を深められる内容が求められます。企業側も単に作業を体験させるだけでなく、業界理解を促すようなプログラム構成にすることで、企業イメージの向上につなげられます。
2. インターンシップ後のフォロー
インターンシップ後に学生に対してフィードバックを提供し、質問や疑問に答えることで、企業に対する理解度を深めてもらうと効果的です。学生がどのような学びを得たのか確認することで、次回のインターンシップ運営にも役立てられます。
新ルールに基づくインターンシップは、学生の「学び」を中心にしたプログラムであり、企業と学生の双方にとってメリットがあります。企業の採用担当者は4つのインターンシップタイプを理解し、それぞれに合ったプログラムを設計することで、学生にとっても充実した経験を提供できるようにしましょう。