「新卒採用を続けているものの、年々応募が集まりにくくなっている」、「採用予定数を満たすには、これまでと同じやり方では難しい」。
このような課題を感じている採用担当者もいるかもしれません。
2030年に向けて、若年人口の減少が続くことはほぼ確実です。
ただし、2030年になった途端、新卒者が大幅に減るわけではありません。
人口統計を見ると、減少は段階的に進み、その影響がさらに大きくなるのは2030年代半ば以降と考えられます。
企業側では、すでに新卒だけでなく、第二新卒や既卒者を採用する動きが広がっています。
今後は「新卒採用」と「中途採用」を完全に分けるのではなく、一定の年齢・経験層を対象とする「若手採用」という考え方が、より一般的になる可能性があります。
この記事では、2030年までに若手採用市場がどのように変わるのかを、人口推計や採用調査をもとに整理します。
2030年の新卒採用市場は、急変よりも緩やかな縮小が見込まれる
2030年の大卒世代は、すでに生まれている
将来の新卒採用市場を考えるうえで、まず確認したいのが若年人口の推移です。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、日本における「22歳」の人口は、2026年の約118万9,000人から、2030年には約116万8,000人になると見込まれています。
4年間の減少幅は約2万1,000人です。
大学院への進学者や既卒者、留学生などもいるため、この数字をそのまま大卒就職者数として扱うことはできませんが、それでも、2030年ごろには新卒採用のターゲットの減少は確実でしょう。
また、18歳人口は2026年の約110万7,000人から、2030年には約105万2,000人、2035年には約96万4,000人まで減少する推計です。
大学への進学率が変われば大学生数も変動しますが、2030年代半ば以降の新卒採用市場では、人口減少の影響が現在よりも表れやすくなると考えられます。
つまり2030年は、その後の更なる採用難に備え、事前に対策を練るための節目として捉えるのが良いのではないでしょうか。
少子化だけで採用難が決まるわけではない
また新卒採用の難易度は、若年人口だけでは決まりません。
大学・大学院への進学率、学生の民間企業への就職希望、企業の採用予定数、景気、業種別の求人動向なども影響します。
リクルートワークス研究所の「第43回 ワークス大卒求人倍率調査」によると、2027年卒の大卒求人倍率は1.62倍でした。
大卒求人倍率とは、民間企業への就職を希望する学生1人に対して、何件の求人があるかを示す数字です。
調査では、2027年卒の民間企業の求人総数が74万8,100人、民間企業就職希望者数が46万2,300人と推計されています。
求人総数は前年から減少したものの、学生数を上回る求人がある状態は続いています。
また、2026年4月入社の大卒初任給は平均23万7,000円で、4年連続の上昇となりました。
だし、この倍率は新卒採用市場全体の数字です。学生からの知名度が高い企業と、十分に知られていない中堅・中小企業では、応募の集まり方が異なります。
業種、職種、勤務地による差もあるため、求人倍率が1倍を超えているからといって、すべての学生が希望する企業に就職できるわけでも、すべての企業が採用予定数を満たせるわけでもありません。
企業の採用意欲が下がれば、求人倍率は変動する
少子化が続くからといって、大卒求人倍率が毎年上昇するとは限りません。
2027年卒の大卒求人倍率は、2025年卒の1.75倍、2026年卒の1.66倍から2年連続で低下しました。
2027年卒調査では、前年の採用計画に対して実績が少なかった企業が予定数を減らしたことや、中途採用の割合を増やす意向が見られたことが、求人減少の背景として挙げられています。
景気が悪化したり、企業が新卒採用を抑制したりすれば、若年人口が減っていても求人倍率は下がる可能性があります。
2030年の市場を正確な倍率で予測することは困難ですが、
「若い人材を採用したい企業が多い一方で、その母数は少しずつ減っていく」という構造は、短期間では変わりにくいと見られます。
新卒だけで採用予定数を満たす難しさは残る
採用難は、すでに起きている問題
2030年を待たなくても、新卒採用に苦戦する企業は増えています。
マイナビの「2026年卒 企業新卒採用予定調査」では、回答企業の78.1%が、2026年卒の新卒採用環境について「厳しくなる」と予想していました。
採用が厳しくなっている要因として、67.7%の企業が「新卒学生全体の数が減っていること」を挙げています。
この調査では、初任給を引き上げる予定がある企業も54.1%に達しました。
学生を確保するため、給与面での競争も広がっています。
特に中堅・中小企業の場合、初任給や広告費を大企業と同じ水準まで引き上げ続けることは難しいかもしれません。
金額だけで競争しようとすると、採用コストが増えても応募や内定承諾につながらない可能性があります。
自社で働くメリット、仕事の内容、勤務地、育成方法、社員との関係性などを整理し、学生が入社後を具体的にイメージできる情報を伝える必要があります。
採用対象を1学年に限定するリスク
新卒一括採用では、特定の卒業年度の学生に対して、限られた期間に多くの企業が接触します。
企業の募集時期が重なりやすいため、知名度が低い企業や採用人数の少ない企業は、学生に見つけてもらえないまま採用期間を終えることもあります。
さらに、採用予定数を満たせなかった場合、次の卒業年度まで待たなければならない設計では、人員不足が長期化します。
若手採用の対象を広げれば、採用活動を1年単位で考える必要がなくなります。
新卒者に加えて、既卒者や第二新卒を年間を通じて募集することで、欠員や事業計画に合わせて採用しやすくなります。
これは新卒採用をやめるという意味ではありません。
新卒採用を残しながら、同じ仕事を担える人材との接点を増やす考え方です。
第二新卒を含む「若手採用」が広がる可能性
第二新卒には統一された定義がない
第二新卒とは、一般に学校卒業後に就職し、比較的短い就業経験を経て転職する若手を指します。
ただし、法律などで定められた共通の定義はありません。
企業や採用サービスによって、「卒業後3年以内」「25歳以下」「20代で社会人経験がある人」など、対象範囲が異なります。
募集時には、第二新卒という言葉だけを使わず、対象となる年齢や経験、卒業後の年数を求人票に記載した方が分かりやすくなります。
厚生労働省が若者雇用促進法に基づいて定める指針では、企業に対して、既卒者が卒業後少なくとも3年間は新卒枠へ応募できるよう努めること、できる限り上限年齢を設けないよう努めることが示されています。
「新卒か中途か」という区分を固定するのではなく、入社後に育成できる人材を広く受け入れる考え方は、国の若年者雇用施策とも合っています。
第二新卒採用はすでに特別な手法ではない
マイナビが企業の採用担当者2,101人を対象に実施した「企業人材ニーズ調査2025年版」では、正社員採用担当者の60.9%が第二新卒採用を実施していました。
さらに9.7%が「現在は実施していないが今後実施を予定している」と回答しています。
この調査では、第二新卒を「学校を卒業しておおむね3年以内の就労経験者」と定義しており、既卒未就労者は含んでいません。
第二新卒採用を実施している企業のうち、37.0%は今後、採用数を増やす方針を示しています。
第二新卒は、新卒採用で予定数を満たせなかった場合だけに検討する対象ではなく、若手を採用するための通常の選択肢になりつつあります。
若手採用なら複数の層へ接点を広げられる
若手採用という枠組みを設ける場合、対象として考えられるのは次のような人材です。
・卒業予定の学生
・卒業後に就職していない既卒者
・入社後おおむね3年以内に転職を考えている第二新卒
・異なる職種への転職を希望する20代の未経験者
・海外大学の卒業者や外国人留学生
対象を増やせば採用しやすくなるとは限りません。
育成できる範囲を超えて経験要件を広げると、選考基準が曖昧になったり、入社後のミスマッチが増えたりします。
先に「入社時点で必要な能力」と「入社後に身につけてもらう能力」を分けたうえで、どの層まで受け入れられるかを決めることが大切です。
新卒採用と若手中途採用は何を変えるべきか
採用区分よりも、入社後の役割を基準にする
若手採用へ移行する際は、「新卒用の求人」と「中途用の求人」をそのまま並べるだけでは不十分です。
採用経路が違っても、同じ仕事を任せるのであれば、共通の人物要件を設定します。
例えば、営業職を採用する場合、学生には「営業経験がないこと」を前提にしながら、第二新卒には実務経験を必須とすると、選考基準に差が生まれます。
その営業経験が本当に入社時点で必要なのか、研修で補えるのかを検討しましょう。
経験よりも、顧客の話を聞く力、学ぶ姿勢、社内外との連絡を正確に行う力などを優先した方が、対象を広げられることもあります。
選考方法はすべて同じにしなくてよい
採用基準を共通化しても、選考の進め方まで完全にそろえる必要はありません。
学生には、職場で働いた経験がないことを踏まえ、仕事や業界を理解できる説明が必要です。
一方、第二新卒には、前職で担当したことや転職を考えた理由を確認します。
ただし、早期離職の事実だけで評価を下げるのではなく、前職選びで何を見落としたのか、次の職場では何を確かめたいのかまで聞くことがポイントです。
既卒者の場合は、卒業後の期間に何をしていたかを確認しつつ、在学中に就職しなかったことだけを不利に扱わない選考設計が必要になります。
共通して確認する項目と、対象者ごとに変える項目を面接評価シートに分けておけば、面接官による判断のばらつきも抑えられます。
入社時期と研修を見直す
新卒採用と第二新卒採用を併用する場合、入社時期も見直す必要があります。
4月入社だけでなく、10月入社や毎月入社を設けると、年間を通じて若手を採用できます。
ただし、少人数での入社が続くと、その都度同じ研修を行う負担が増えます。
基礎研修を動画や資料で共通化し、仕事の実践部分は配属先で教える方法もあります。
複数人がそろった時期に集合研修を行い、それまでは現場で必要な内容から学んでもらう設計も考えられます。
採用対象を広げるなら採用活動だけでなく、受け入れと育成の仕組みまで一緒に整えなければなりません。
2030年に向けて今から確認したい5つの項目
若手採用へ一度に切り替える必要はありません。
まずは、現在の新卒採用で採用できている人数と不足している人数を確認し、対象を広げる必要があるかを判断します。
1.新卒採用の目標人数と実績人数
過去3年程度の採用予定数、内定者数、入社者数を整理します。
毎年予定数を下回っている場合は、採用対象や採用時期の見直しを検討します。
2.若手に任せる仕事と必要な経験
「新卒だから未経験可」「中途だから経験必須」と分けず、仕事ごとに本当に必要な経験を確認します。
入社後に学べる内容は、必須条件から外せる可能性があります。
3.既卒者・第二新卒の応募条件
卒業後の年数、社会人経験、年齢、必要資格などを決めます。
年齢のみで対象を狭めるのではなく、業務との関係を説明できる条件にすると良いでしょう。
4.入社後の研修と配属方法
新卒者と第二新卒者に共通する研修、個別に必要な研修を分けます。
配属先の教育担当者や、入社後1か月・3か月・6か月の面談担当者も決めておきます。
5.採用後に追う数字
応募数だけでなく、対象別の選考通過率、内定承諾率、採用単価、入社後の定着率を確認します。
新卒、既卒、第二新卒で数値を分けると、どの採用経路が自社に合っているか判断しやすくなります。
【まとめ】
若年人口は緩やかに減り、2030年代半ば以降は新卒採用の母数縮小がさらに表れやすくなります。
そんな中、特定の卒業年度だけを対象に採用予定数を満たす方法は、中堅・中小企業にとって不安定になりやすいと考えられます。
まず取り組みたいのは、新卒、既卒、第二新卒の区分を外しても採用できる仕事があるかを確認することです。
入社時に必要な能力と、入社後に育成できる能力を分ければ、若手採用の対象をどこまで広げられるかが見えてきます。
新卒採用を続けながら第二新卒などとの接点を増やし、年間を通じて若手を受け入れられる体制をつくる。
これが、2030年以降の採用市場に備える現実的な進め方です。
自社だけで採用区分や選考方法を整理することが難しい場合は、採用支援会社へ採用計画の設計や実務の一部を相談する方法もあります。
< 出典 >
1.国立社会保障・人口問題研究所
「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
2.リクルートワークス研究所
「第43回 ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)」
3.マイナビキャリアリサーチLab
「2026年卒 企業新卒採用予定調査」
4.マイナビキャリアリサーチLab
「『とりあえず3年』今は昔?熱を帯びる第二新卒採用」
5.厚生労働省・千葉労働局
「卒業後3年以内の既卒者は、『新卒枠』での応募受付を!」